歯を磨いているのに虫歯ができて困ると悩んでおられる方は多いようです。 検査をしてみると適切にプラークコントロールできていません。 ほとんどの方は成人してから, 歯ブラシの使い方を個々のお口の状況に合わせて詳しく習ったことがないはずです。 しかし,歯を人生を通じて使うためには絶対に必要な条件であることが科学的に証明されています。 今の時代,歯を全く磨かないという方はほとんどおられません。 しかし,それは不十分で適切ではない方法である事が普通です。 病気に対して十分に効果的なブラッシングというのは教育を受けて学習しなければ, 絶対に出来るようにはなりません。 歯周病の中で,もっとも重症なものである歯周炎という病気は, 10〜20歳代の方が罹ることは特殊な歯周病を除いて稀です。 そして,幼少期から適切で十分なケアが続けられているかどうかで中年期以降に歯を痛めたり, 多数の歯を失うことを予防することができるのです。
皆さんはどんな歯ブラシを使っておられますか?。 薬品店やコンビニに行くといろんな形の歯ブラシが売られています。 どんな基準で選んでおられるのでしょうか?。 お勧めできるデザインとしては,ブラシの部分からハンドルのはじっこまで真っ直ぐのもので, 植毛してあるブラシの部分が小さいもの(子供用くらい)で中くらい堅さのナイロン製のものが良いと思います。
まず持ち方ですが,鉛筆を持つように持ちます。 写真のようにブラシの部分を裏表にすれば,右利きの人なら右手で, 左利きの人なら左手だけで口中のすべての歯の細部にわたるまで十分に磨くことができます。
図に示すようにブラシの毛先を歯茎の方向に対して45度の角度で当てて, 小刻みに振動あるいは小さく回転させるのです。 決して擦るのではありません。 この方法をバス法と言います。 歯と歯の間,歯と歯茎の隙間にブラシが入って当たる感覚がわかりますか? この感覚をつかむことがポイントです! そして,1本の歯ごとに丁寧に10〜20回振動させます。 その際にナイロン製の歯ブラシの弾性を最大限に生かすことです。 毛先が曲がってしまった歯ブラシでは,この磨き方は不可能です。
一度に2〜3歯に歯ブラシが当たると思いますが, 中央の歯だけが適切にブラッシングされているので28歯(大人の永久歯の数です, この数に親不知は含みません)で, 1歯毎に表と裏がありますから合計56歯面行うことになります。 全てにやるのは十分な時間が必要です。 普通は20分強はかかると思います。 これが辛いと考えるのは生活習慣として馴染んでないだけなので, その生活が当たり前になればなんら問題はありません。 ましてや,これからトレーニングするあなたは,もっとかかるでしょう。 熟練するまでは鏡を見ながら行うことが大切です。
図に示すように歯の前面と裏面および, かみ合わせの面に対して連続して大きく円を描くようにして行います。 これをフォーンズ法といいます。 大人のためのう蝕予防に有効ですし,子供にはこれだけでも大丈夫でしょう。 しかし,これは大雑把な磨き方です。 歯周病の予防には以下のような磨き方を修得する必要があります。
いずれの方法もけして力をいれすぎてはいけません。 毎日20分くらい歯磨きをするとして, 2週間くらいでブラシの毛先が 開いてきて交換するというのが理想的です。 しかし,実際には,皆さんの口の中の歯の状況は様々ですから, 専門医や歯科衛生士にあなたの歯並びに適したブラッシング方法を指導してもらう必要があります。 その時は,ぜひ『歯間ブラシ』あるいは 『デンタルフロス』の使い方も習ってください。 以上に述べた方法をマスターした上で,こういった,補助器具を使いこなせたとき, あなたの口腔はプラークフリー (虫歯や歯周病のリスクが十分に抑制された状態)になるのです。
ほとんどの方は洗面所で立った状態で歯磨きをする習慣があると思います。 そして,それはホンの数分にしか過ぎないはずです。 歯を磨く場所は何処で磨いても自由ですが,座って行ってください。 十分に時間をかけてブラッシングしても疲れないと思います。 冬は寒く,夏は暑い洗面所で立って 磨く習慣は止めましょう。 私達,歯科医療関係者も1日に1回は10分以上自分の歯を磨いているのです。
どうですか?とても面倒だと感じられましたか?。 もしそうであるなら(ほとんどの方はそうだと思いますが・・・)それは, 単に今まで生活習慣としてそういう磨き方をしていなかったということに過ぎません。 生活習慣として, これ無しでは1日が終わらない,気持ち悪い状態になります。 歯磨き粉を使わなくともお口がすごくさっぱりした状態になります。 きちんと習って習得して下さい。 それはきっとあなたの歯とあなたに快適な人生をプレゼントしてくれると思います。
あなたは日に何回歯を磨いてますか?。 朝夕の2回ですか?毎食後3回でしょうか?。 ピカピカに磨き上げたツルツルの歯の表面も24時間後, つまり丸1日で歯垢(プラーク)は完全に歯の表面を覆ってしまいます。 それは市販の歯垢染色液でどなたにでも確認することが出来ます。 そのようにして付着したプラークは約48時間後に,歯肉に病理学的な炎症を起こします。 そして72時間で臨床的な炎症が観察されるようになります。 これが全ての人に起こる歯肉炎です。 でも,歯肉炎までは可逆的なので,歯ブラシだけで治癒します。 しかし,歯周炎にいたると専門医による治療が必要になります。 これは患者さん自身が診断することは不可能ですので,必ずご相談ください。
24時間に1回つまり1日に1回完璧に(プラークが全くない状態!)にしてあげれば, あなたの人生は歯周病とは無縁になります。 どんなに頑張っても,プラークスコアをいつも完全な0%にすることは,事実上不可能です。 ですから数%はプラークがいつも残っていると考えてください。 日に3度の適当なブラッシングでは臨床的な効果はまったく望めません。 正しく訓練された1日1度だけのブラッシングがはるかに有効であるというのは科学的に証明された事実です。
ただし,子供達の虫歯の予防や虫歯のリスクの高い大人にはもう少し頻繁に磨く必要があります。 これは,虫歯の原因となる酸は, 歯肉炎を起こすよりも時間的にはるかに早く分単位で産生されるからです。 ミュータンス菌は砂糖を与えると数分でその周りの環境を一気に酸性にしてしまうことが知られています。 虫歯予防には,唾液の緩衝能検査をしたうえで頻度の高いブラッシングと食生活の指導が必要です。
歯周病の治療を受ける必要のある患者さんにとって一番重要なのは, 『正しいブラッシング』を学習することです。 そしてブラッシングが持つ医療効果として唯一重要なのは『ナイロン毛の末端による摩擦』です。 そして,『歯と歯根の表面に付着した歯垢(デンタル・プラーク)を擦り落とす』ことだけです。
私たちの診療室には初期症状から重症まで様々な歯周病の患者さん方がいらっしゃいます。 一人の例外なくブラッシングの指導を受けることになります。 その際,歯磨き粉を使わないでブラッシングすることを推奨しております。 歯磨き粉を使わないことを推奨する理由は 以下のようなものです。
う蝕(むし歯)に対する感受性よりも歯周病に対する感受性が高い大人の方にとって1日3回手早く磨くよりも, 1日に1回で結構ですから 『正しいブラッシング』を励行することが重要なのです。 ですから,通常は,夜に『正しいブラッシング』を時間を割いて行うべきです。 一般的に起床時はどなたも口臭などが気になることも 多いでしょうから, 歯磨き粉を使って手短に済ませるのは悪いことではありません。
さらに,コーヒー,紅茶,および緑茶などの嗜好品あるいはタバコなどによるステイン (歯の表面に沈着した歯垢・歯石ではない黒褐色系のよごれ)の除去にはブラッシングだけではダメで, 歯磨き粉の使用が大きな意義を持ちます。 しかし,『ヤニ取り』効果をうたう研磨剤の粒子が粗い歯磨剤はエナメル質を始めとする歯の表面を大きく摩耗させますので, 専門医に適切な歯磨き粉を選んでもらい注意深く使用するべきです。
歯周病に対して有効なブラッシングに適したブラシは, ほとんどの成人には,普通の形状歯ブラシと歯間ブラシとデンタルフロスです。
柄付きの歯ブラシについては, このガイドラインに準じていればどの様なものでも結構ですが, 一般に市販されているものは, 少しヘッドが大きすぎるモノが多いようです。 この点にご留意下さい。
歯間ブラシは,今までお使いになった事のない方がきちんと磨ける適切なサイズものを選ぶことは困難です。 必ず専門医に歯周病の検査と同時に選んでもらって下さい。 なぜかと申しますと歯と歯茎の形はみんな異なっておりますし, 患者さんが想像する以上に複雑な 形態をしているからです。 もし長期にわたり誤った使い方を続ければ,何の効果もなかったり,歯が削れてしまうこともあります。 デンタルフロスに関しても同様だといえます。
現代文明社会に生きている私たちは,例外なく調理された食品を食べています。 調理することによって味覚を人に合わせ,食べやすく基本的には軟らかくしているわけです。 軟らかい食品は,咀嚼することによる歯の表面の自浄作用が期待できません。 つまり,文明的な生活というのは,必ず歯に歯垢(プラーク)が付着するのです。
近年は電動歯ブラシと言うものが世間に出回っており(それも創意工夫残らされたものが大多数です!), 私どものところにもその臨床評価を求められたりします。 電動歯ブラシが市場に求められる根拠は何でしょうか?。 「歯磨き面倒だから・・・」これに尽きると思います。 歯ブラシというものは歯の健康のためには絶対に必要なものですが, その性能を客観的に知ることには若干無理があります。 というのも,歯の形,大きさ,歯並びの具合,使用者の器用さ, 歯に対する関心度などなどどれをとっても個人差の激しいものばかりです。 ですから同じものを使ったからといって, 同じ磨き具合が得られるとは限らないということが理解できると思います。
果たして電動歯ブラシは,皆さんの期待どおり面倒なブラッシングの救世主足り得るのでしょうか?。 いくらかのデータによれば, 電動歯ブラシはきちんと練習した普通の手用の歯ブラシと同程度の歯垢を除去する能力があるとされています。 電動歯ブラシの明らかな利点として,ハンディキャップの方,あるいはそういった方を看護, お世話をしている方には十分な利得があると思います。
実の所,ブラッシングの難しさというのは, 如何にして歯と歯並びの隅々にまで正確に歯ブラシの毛先を当てるかという点に尽きます。 皆さん一度お口の中を鏡でじっくり見てください。 歯と歯の隙間,歯と歯肉との付根の部分, 一番奥の歯の奥の面などとても複雑なデッパリや膨らみをしているのが観察されることと思います。 この様に複雑で細かい立体構造をした歯と歯茎の周辺の歯垢をきちんと取り除くためには, 歯ブラシの毛先が必ず到達していなければなりません。 この要求は電動歯ブラシでも原則は同じです。 ブラシが当たらない個所の歯垢は残ったままになる・・・ということです。 ブラッシングのテクニックとして歯並びの隅々まで十分に当てることがで必要になります。 激しい電動歯ブラシの毛先の運動は利用者の指先や歯茎の感覚を騙しますので, 磨き残しが多くなる傾向にあります。
病気をきちんと防ぎうるブラッシングを習得し継続するには, 専門医による教育と定期的なチェックが絶対に必要です。 そして適切な道具の選択と方法とともに指導してもらい学習することが大事です。
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