メンテナンス

■ 歯周病専門医によるメンテナンス

 歯周の治療を受ける決心をして,やっと治療が終わり,快適な状態になりました。 この状況はいつまで続くのでしょうか?。残念なことに素晴らしく良く歯を磨く事のできる技量を備えた方でも依然として再発のリスク(殆どの場合リスクは提言されているのが普通ですが、ゼロにはなりません)はあります。これは科学的に証明された事実です。これに対応するには何が必要なのでしょうか?

プラーク(歯垢)もほとんどなく,歯石は完全に除去され,歯周ポケットにも炎症の徴候は見えない。 欠損した歯はきちんと補綴(失った部分の歯を作って入れること)され,噛み合わせも適切に調整されています。治療により得られた素晴らしいあなたの口腔内の環境もその状況が永遠に続く保証はないのです。歯垢はどんなに丁寧に磨いても数パーセント以下は残りますし,そういった箇所には時間の経過とともに見えないような微細な歯石も形成されます。注意しないと人工の歯を入れた場合は歯の位置が変わったりすることがありますから,見過ごすと噛み合わせのバランスを壊すことになります。噛み合わせのバランスが崩れると無理な力がかかる歯ができてしまいます。この様にして時の流れは容赦なく口腔の環境を侵襲していきます。

歯科における問題解決の最良の方法が,早期発見と治療であることはご説明申し上げたとおりです。ですから治療後もその原則を徹底すればよいのです。そのために考えられた方法が数ヶ月ごとのリコールによるメンテナンスと呼ばれるものです。

歯周ポケットの中の微生物は,歯周病が活発に進行している時期と適切に治療された状態とでは当然ながら『異なり』ます。歯周病は感染症ですから悪いバイ菌をやっつければいいと考えられます。しかし,口の中の細菌をねこそぎゼロにしてしまうことは不可能ですし,歯周病を起こす種類の細菌だけを特定してやっつけることも現在の技術では困難なのです。

適切な治療が功を奏している口腔内には歯周病を増悪させる細菌の割合は大変低くなっています。その状況がずっと持続するなら治療は大成功です。しかし,普段の生活で細菌の数を少ないようにコントロールする主役は言うまでもなくブラッシングです。ブラッシングの持つポテンシャルはすごいと思いますが,当然ながら物理的な限度もあります。歯ブラシの毛先は十分に熟練したバス法をマスターした患者さんでも歯周ポケットの入口1〜2mmまでが限度だと言うことが知られております。

■ キーリスク部位はかならず専門医に任せましょう

 プラークコントロールの項目で説明したバイオフィルムは時間の経過とともに知らず知らずのうちにみなさんの歯の表面を覆っていきます。 シンプルな前歯の表面などはホームケアで完全に管理可能ですが,小臼歯および大臼歯の歯間隣接面や舌側歯頚部をホームケアで完全な状況を保つことは,ほとんど不可能です。ですから,これを専門家によって定期的に除去することが効果的な予防処置の鍵です。この処置を総称してProfessional Tooth Cleaningと呼びます。 まずバイオフィルムを染色してから専門のマイクロモーター機具を使用して行います。主に歯の裏側と歯の間を中心(キーリスク部位)に行います。

専門医および歯科衛生士がこの仕事の中心です。定期的に繰り返されるPMTCは歯周病と虫歯の再発を非常に高い成績で予防することが科学的に証明されています。当院ではある程度以上の規模の修復をした場合には最初の1年に限り1ヶ月単位でのチェックアップをお奨めしております。その理由は治療後の初期トラブルはほとんどこの時期に集中することが研究により知られているためです。

ある有名な研究によれば,スケーリング・ルートプレーニング(専門医による歯石の除去)を受け,ブラッシングを完全にマスターした患者さんの歯周ポケット内の嫌気性のグラム陰性細菌(バイオフィルム)が治療前の状態と同等に戻るのに約3ヶ月かかるというのです。 そこで3ヶ月毎に歯周ポケット内のバイオフィルムを除去するようにすれば,患者さんの歯周ポケット内の細菌は病気を起こさない・悪化させない環境を維持できるのです。これが歯周病の治療の後,メンテナンスをするのに一つの基準となっている3ヶ月に一度のリコールです。もっとも現実には,衛生状況が非常に良く管理されており,リスクの少ない患者さんはその間隔が長くなりますし,リスクの高い状況では2ヶ月に1回ということも起こりえます。