■ 歯を失いたくないならば,なぜ歯を失うのか知る必要があります
多くの方にとって,歯の喪失という問題は,具体的な解決策を得ることの無いまま人知れず悩み続けておれれる事も多いことかと思われます。 その証拠として成人の大部分の方が壮年期を迎える頃には取り外し式の義歯のお世話になっていたり,あるいは差し歯*やそれに類したブリッジ, にぶい銀色の冠や詰め物だらけの状態になってゆきます。そのせいもあってか鏡でお口の中を見る事から疎遠になり,心中溜息をついて いらっしゃる人も多いことでしょう。
*(差し歯という言葉が一般的になっているのは問題があると考えております。 クラウンと呼ぶのが世界中で通用する言葉でしょう。もし,言葉通りの『差し歯』がポストクラウンを意味するのなら,
それはかなり品質の低い治療だと考えられており,少なくとも先進諸国では通用しない治療に違いありません。)
では,歯を削ったり抜いたりせざるを得なくなり, 老年期に至る頃にはほとんどの歯を失ってしまうのは単に加齢のせいなのでしょうか? 現在の科学では加齢は歯の喪失原因ではない事が明らかになっています。歯を失うのには全て理由があるのです。 しかし,年齢を経るとともに単純に放置しておくだけでは,少しずつ歯を失う要因が積み重なり,やがて決壊していく事になります。 ですから,そしてそれらの理由に対して適切な対策を施せば,
生涯美しい御自身の歯で過ごすことが可能なのです。 さらに現在の私たちの知識を動員すれば, 出生時から適切な管理を続けた子供達が大人になった時, 事故以外の理由で歯を喪失することを無くす事すら可能なのです。 この様なことは,もはや当然の事となってきております。
■ 治療を受けるのに早すぎることはありません
美しい口元と歯は皆さんの財産です。しかし,痛みと共に始める治療開始時期は総じて遅すぎる傾向にあります。現代歯科医学の粋をもってしても歯の治療の基本は,残念ながら引き算が主体です。つまり,歯周病に冒された歯茎の組織も,虫歯になった歯も,抜いてしまった歯もすべてが,少年期に萌出した頃の無傷の歯をそのまま取り戻せるわけではありません(但し技術革新により部分的に可能になってきた部分もあります)。そして,あなたが治療を受けようと決心するのが遅ければ遅いほど,治療の内容は複雑になり,それに要する時間と費用がより多く必要となります。
一般的な心理として歯科医師のもとを訪れることに躊躇したり億劫になるのは良く理解できます。なぜなら私たちでさえそうであるからです。ですから多くの患者さんは痛みの発現と共にやっと初診として来院されます。そして除痛を施し,治療計画を相談してから治療を始めることが一般的です。しかしもし,あなたがより低コストでより信頼性の高い治療結果を所望なさるのならば,そういったやり方は治療開始時点としては遅すぎます。重症になればなるほど治療に手間暇が掛かるにも関わらず,それにより得られる信頼性は低下傾向にあるからです。
私たちにとって,平易な治療のみで,生涯美しい口元で,ご機嫌に噛むことのできる患者さんというのは,一見して『一体何処を治す必要があるのですか?』・・・というようなお口の持ち主のことなのです。残念なことですが,ほとんどの大人に見つかるう蝕や,様々な程度の歯周病および欠損した歯は,将来的には全て歯を失うことに直結する大きな問題です。これについて皆さんは御自身の価値観を問いただすべきですし,何とかしたいならば私たちにご相談頂き,その上で真剣に考慮することは価値がある行為だと思います。
■ どのような治療が必要でしょうか?
日本人の社会通念および慣習として大口を開けて笑ったり,美しい歯並びを誇るように口元を見せることが美徳ではないとされていたせいでしょうか? 相当に社会的に活躍なさっている方であっても歯を失ったり,相当悪い状態の口腔内の方が多く見受けられます。これは,世界に出ていく日本人が多くなった現代では,ちょっと恥ずかしいことであります。
人生という非常な長期間に渡って機能的に問題なく,美しく健康な歯でありたいと願うならば,痛かったり,
良く噛むことが出来なかったりする自覚症状についての改善だけでは駄目です。もしこの段階で治療を終了したことにすれば,残念ながらあなたの口腔内環境は,将来においてひどい状況になってしまう可能性が大きいのです。
そのために必要な治療は大まかに『歯周病』,『う蝕』,『歯の欠損』,『噛み合せ』の4つについてそれぞれ調和のとれたものにすることです。そのためには口腔内についての精密な検査を受けてあなたに一番適切であるプランを選択し,1日も早く問題点を解決して,良好な環境を構築することです。その結果として得ることの出来る皆さんの口腔内環境はホームケアととメンテナンスにより数十年に渡り容易に維持・管理の出来るものとして理想的なものになるでしょう。