■ インプラント (Implant)治療を考えるに当たって一番大切なこと
インプラントを考えるに当たって一番大切なことは,インプラントの処置を行った後,施術した歯科医師が責任を持って適切な予後の管理を継続的に行うことです。予後の管理が施術した歯科医師により適切に行われない(やりっぱなし)ことが考えられる場合には,原則的にこの方法を選択すべきではありません。
つまり,インプラントを埋入し,人工の歯を再建するという治療そのものはもちろん大切です。しかしながら,フォローアップのメインテナンス・システムを欠かさない事こそが,患者さんが受けた治療の良好な結果が未来に確実に続いていく事を予測させる唯一にして無二のメソッドだという事です。
■ インプラント周囲炎・インプラント周囲粘膜炎
インプラント周囲炎・インプラント周囲粘膜炎というのは聞きなれない言葉かもしれません。これはインプラントの歯周病を意味しています。2000年を境に世界中で大量に治療されたインプラント治療は、そのすべてが歯周病の管理に熟達した歯科医師や歯周病専門医だけになされているわけではなく、一般の歯科医によるものも多数あります。治療後に年間数回のインプラント周囲組織のフォローアップを受けていないインプラント治療は半数以上がインプラント周囲炎・インプラント周囲粘膜炎を患っているという統計的な調査もあり、事実患者さんの自覚症状からも不具合のあるインプラントが続出し始めています。こういった事態におちいる前に、十分に歯周病の治療を行い、その口腔内環境に最適なインプラントの施術と治療後のメンテナンスを確実に受けることが肝心です。歯周病専門医はそういった治療のエキスパートです。
■ 他医院で施術されたインプラントに関して
他医院で施術されたインプラントに関しても適切な設計により適切におこなわれた物に関しては,当医院での管理は可能です。実際他院で治療をしたインプラントの予後の管理をおこなっている患者さんがいます。しかしながら,不適切な設計の基に行われたインプラントを管理する事はできません,なぜならそもそも管理の目的はインプラントを長持ちさせ,口腔を長期にわたり快適な状態に保持することであり,近い将来に崩壊する運命にある不適切に設計,施術されたインプラントに,時間とコストをかけて管理することは合理性に欠けると考えられます。
一般にインプラントは患者さんにとって経済的な負担がかかる処置です。予後の管理を考えなければ初期の費用を安くあげることが可能な場合があるかもしれません。しかしながら安物買いで不利益を被ることがないよう,インプラントの処置を行う際には,予後の管理を責任をもって適切に行う,技術力の高い専門医を選択したいものです。
■ インプラント (Implant)のリスクをどのように考えるか?
インプラント治療による様々な問題やトラブルは,少しインターネットを日本語で検索すれば沢山ある事がわかります。 しかし,世界に目を向けると日本国内で見受けられるようなトラブルがほとんど見あたらない事もわかります。 このような違いをどのように考えればよいのでしょうか?
最大の要因は日本の歯科医学教育にあります。基本的に日本の大学では日本の健康保険に準拠するように歯科医学の教育を行っています。しかし,日本の健康保険制度にもとずく歯科医療の水準はかなり低いというのが世界的な定見となっています。ですから,日本の歯科医学を取り扱うライセンスを取得しただけでは,日本以外の先進諸国での卒後に歯周病専門医として徹底した教育を受けた専門医だけが取り組む世界標準のインプラント (Implant)と比較して同じような技術水準を期待する事が事実上無理だという事実です。制度としての歯周病専門医は日本ではスタートしたばかりですし,インプラント治療の技術習得はそのカリキュラムに含まれていないのです。
患者さんは注意深くその様な技術を修得している歯科医師をあらゆる情報を分析して選択する必要があると考えます。残念ながら医療は何処ででも,誰にでも同じように均質に提供出来るという建前は幻想に過ぎません。専門知識と技量については大きな隔たりがあるのが常識だと認識なさるべきです。
インプラント (Implant)による治療を希望される患者さんへのアドヴァイスがあります。それは,インプラントはそれだけで独立した治療ではなく,あくまであなたの治療計画のオプションの一つに過ぎないと言う事です。口腔の健康を永続して希望する際に,どのようなメリットをもたらすのかは人によって異なりますし,その恩恵を受けるためのデメリットやリスクについて考慮すべきです。それから,何らかの形で専門教育を受けた専門医を選ぶ事が,問題とリスクの少ない,インプラント (Implant)による治療を望む必要十分条件であるという事です。その様な歯科医師のもとでカウンセリングとコンサルティングを受けた上で,十分理解・納得してから治療を受けるならば,恐らくあなたの希望は現実のものとなるでしょう。
■ インプラントメーカーの乱立
インプラントの情報を調べてみると分かると思いますが,ものすごい数のメーカーが存在しており,その数は100に迫ろうかという勢いです。どのメーカーのものが良いのか?という疑問は当然生じます。基本的にはオッセオインテグレーションの原理に基づいたものがほとんどですが,その中で,当方ではEBMの研究対象として世界各地で無関係に臨床採用されているものを信頼に足ると判断しております。単一国のみで採用されているもの,メーカーサイドの研究者によってのみ報告されているものに関しては除外しています。