歯列矯正治療

■ 歯列矯正は美しさのため?

歯並びの良し悪しは,あなたの歯とお口全体の将来を大きく左右します。 歯並びが悪いと虫歯にも歯周病にもなる可能性が非常に高まります。 なぜなら,折り重なった歯はプラークコントロールが絶対的に不良になる箇所が出来るからです。

一方で,歯周病の方,喪失した歯をそのままになさっている方は、後天的に大きく病的に歯が移動してしまうことが多く,それはさらなる口腔環境の崩壊につながります。 残念なことに不正歯列がもたらす歯周病で歯を喪失する日本人の成人は他の先進諸国に比較して非常に多いのです。

歯並びと歯周病との因果関係を適切に診断し,治療できる歯科医師あるいは歯科医院はごく少数であるといっても過言ではないでしょう。

当院は歯周病の専門医が運営しており,ときに矯正治療を専門に受け持つ歯科医師と連携し適切で強力なコラボレーションを築いております。 こういった治療スタイルを Interdisciplinary approach といい,医療先進国では既に広く行われている分野の異なる専門医の連携治療です。 もちろん,矯正治療のみが必要な患者さんも同時に口腔の管理を行うことはとても大切なことといえます。

■ 日本の成人は歯並びが悪いのに治さない

国民性の問題もあるのでしょうが,歯並びについて先進国の国民としては最も無関心な部類に入ると思います。 欧米の歯科医師が日本人成人の口腔内写真を見たときに歯並びを見て「生活保護を受けているのか?」と尋ねることも珍しいことではありません。 *米国では所得により健康保険で受診できる歯科医療の品質が異なります。 これがいいことか悪いことかは別の問題ですが,歯並びの悪さは,お年を召したときの歯の喪失に直結します。 八重歯や歯並びがガタガタの高齢者というのはまずいらっしゃいません。 なぜなら,その年齢に達するまでにすべての歯を失うためです。

一方で歯が隙間だらけで『出っ歯』になった高齢者は多いのです。 これは,歯周病と奥歯の喪失による噛み合わせの崩壊が原因です。 前歯も奥歯もそれぞれの働きがあり,バランスの取れた力がかかるように歯並びは出来ています。 飛び出した八重歯やガタガタの歯並びを成人になっても放置しておくのは,みすみす歯を失うことに等しいのです。

歯は,失ってから再建することは十分可能ですし,快適さを取り戻すこともできますが,歯を失わないですむのならば,それが最も価値のあることに変わりありません。  歯並びが悪いことは,個々の歯に加わる噛む力の配分を狂わせますし,口腔衛生が不十分な箇所をつくってしまいます。

歯の矯正は子供だけのものではありません。 成人になってからの矯正は,ものすごい勢いで受診する方が増えています。 矯正装置が他人に見えるのが気になる方には『見えない矯正治療』がありますし,標準的な装置でも昔のように『ギラギラした』金属の装置だらけになることはありません。 むしろ,子供の矯正は自発的に行われないため,途中で嫌がったり,受験などの環境の変化により中断することも多いのです。 成人の場合はご自身の意思により決定されますから,完全な治療が可能です。 今では,歯の矯正を開始するのに年齢は何の問題にもなりません。 大きな歯の問題を引き起こす前に歯の矯正を済ませてしまうのが最も得策だといえます。

当院では,矯正治療とともに必要な歯科治療はすべてサポートされます。 標準的な歯科医院では対応が難しい歯周病の方の矯正も万全の体制で臨めます。 歯の欠損のある方の矯正治療も然りです。 歯列不正を伴った歯周病は治せますし、すでに歯を失っておられる方には歯周病専門医が提供するインプラント治療を組み合わせることが理想的でしょう。

■ 歯周病に適した矯正治療

 歯周病の方には,歯列の不正が多く認められます。 そして,本質的な咬合の問題を抱えておられることが多く,根本的な問題の解決には歯周病の治療だけではなく,同時に矯正治療が必要となるケースも多いのです。 矯正治療は歯に力を加えて移動するというのが,その治療の本質ですが,歯周病に罹患している場合は,歯茎が健康な方の矯正とは大きく異なり,非常にデリケートな力のコントロールが必要になります。 そのためにブラケットとワイヤーの摩擦抵抗を低減した装置が使用されます。

lowfriction

上の写真は深刻な歯周病の方に処方されたローフリクションタイプのブラケットです。

■ マイクロアンカレッジ・インプラント

矯正治療とは歯を移動する治療です。 歯は歯を支える骨(歯槽骨)の中で作用・反作用の力を利用して動きます。そんためには固定源(アンカレッジ)が必要になります。 一般的には動かす必要のない位置にある大臼歯が利用されます。 しかし,固定源となる歯が歯周病によりしっかりした骨の支えを失っていたり,抜歯を余儀なくされ,欠損している場合はどうでしょうか?

その際には,矯正する力を支える点として,小さなインプラント(直径約2mm弱,長さ約10mm)を利用します。 このインプラントは矯正力を支えるべき歯がない部分にのみ適用されて,治療後は除去されます。 生体に対してまったく可逆的なものです。この技術は比較的新しいもので,歯周病や欠損のある場合,特に大きな利点を発揮します。 ごく小規模な外科処置が必要なので,歯周病専門医が担当しフォローアップします。 ごく簡単な処置で設置可能で,不快感はほぼゼロです。 矯正を支える固定点として理想的な条件を備えており,正確な治療結果が得られ,治療期間の短縮に役立ちます。

その際には,矯正する力を支える点として,小さなインプラント(直径約2mm弱,長さ約10mm)を利用します。 このインプラントは矯正力を支えるべき歯がない部分にのみ適用されて,治療後は除去されます。 生体に対してまったく可逆的なものです。この技術は比較的新しいもので,歯周病や欠損のある場合,特に大きな利点を発揮します。 ごく小規模な外科処置が必要なので,歯周病専門医が担当しフォローアップします。

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 上の写真に見られるプラス(+)ネジの頭に見えるのがマイクロアンカレッジ・インプラントです。 ごく簡単な処置で設置可能で,不快感はほぼゼロです。 矯正を支える固定点として理想的な条件を備えており,正確な治療結果が得られ,治療期間の短縮に役立ちます。

■ 見えない矯正装置(舌側矯正)

 大人の方が歯科の矯正を考える時,『ギラギラした銀色の矯正装置』の有無は大いに気になるところだと思いますし,ためらう最大の理由でしょう。 成人矯正で最も多いこの悩みに対する明確な答えが舌側矯正で通称『見えない矯正』(舌側矯正)です。

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 写真でお分かりいただけるように,歯の裏側に装置をつけるため,まったく見えません。 すでに20年以上の歴史を重ねた技術であり,ブラケット(ワイヤーの力を歯に伝える装置)もかなりコンパクトなものが開発され,装着感も改善されています。 アナウンサー,俳優およびモデルといった職業の方には必須の技術です。 また,表側に装着する矯正装置も歯の色やクリア色のブラケットを用いるために,一般的な日常生活においてはまったく問題がないといえます。