CTを利用した治療の一例

■ 治療前のX線写真

 

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“治療前のパノラマ”

40台の女性です。 この患者さんは,奥歯の不調と歯周病のご不安により来院なさいました。 奥歯の何箇所かは動揺と違和感があり,膿が出ている状況で部分的に深刻な歯槽骨(歯を支える骨)の吸収が認められました。 また,かつて若いころに治療された歯内療法(歯の根の治療)の予後が悪かったり,かつて装着されたブリッジやクラウン,インレーの精度が甘く,ムシ歯によって歯が崩壊しつつある状況でした。

注:このレントゲンはパノラマと呼ばれるものです。 左右が反転していることにご注意願います。 実際の治療では枚数の多い小さなレントゲンも併用して診断されます。

■ CTによるインプラントの診断とシミュレーション

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上の症例では下額にインプラント治療を行っておりますが,骨が華奢で小さいので下顎の骨の中を通っている血管と神経を避けてインプラントを埋入する必要があります。 そこで,立体的に精密な画像診断としてCTによる術前診断を行っております。 この術前の診断の結果,いわゆる下顎管を避けて最大限に骨の維持の得られるインプラントのサイズ(長さと直径)を精密に求めることができました。 これは従来型のパノラマ・レントゲンでは不可能な検査精度です。

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上記のCTの情報を3Dの画像としてコンピュータ上でモデリングしたものです。
手術前にこのような立体画像が得られることは,緻密な知的集約作業である手術をする際にその見積もりが大きく役に立ちます。 現在のデジタルによる技術革新は,歯科においても恩恵をもたらしながら発展し続けています。 しかしながら,治療結果を左右するのは患者さんの理解と努力と歯科医師の学習量とスキルが根本であることが肝心です。 技術の進歩はそれを大いに助けるものであって,IT技術が治療スキルを伸ばすわけではないのです。

■ 治療後のX線写真

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“治療後のパノラマ” 患者さんのご希望は第1に長期的な治療の安定を,第2に白い歯をということでした。 これからご自身の歯で40数年は使えるようにしなければなりませんから、慎重に治療計画を立てました。 最初の治療として保存不可能な歯を診断し,抜歯しました。 保存可能なすべての歯に歯周病の治療を行いました。 特に上下左右の奥歯は歯を支える組織の半分近くを喪失していましたので,歯周病の手術によって徹底的に治療しました。 上額の左右第一大臼歯は歯内療法のやり直しと支台築造を行いました。
歯を失った部分はインプラントで回復する手段を講じました。 こうすることで,残された天然歯への負担を大幅に減ずることが可能になります。 その後,仮のクラウンを装着して入念なかみ合わせの状況の観察と再建を行い,セラミクス製のクラウンが装着可能であると診断されましたので,最終的なクラウンを装着しました。 小さなムシ歯の再充填処置,セラミクスインレーの再製作を経て積極的な治療は終了しました。

■ 治療後の口腔内

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治療後の正面観です。歯周病の基本治療とムシ歯の充填がなされています。

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治療後の左右側面の鏡面観です。犬歯より臼歯にかけて歯周病の手術,インプラントの埋入,セラミッククラウンおよびインレーが装着されています。

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左右上額臼歯の舌側面観です。クラウンとインレーの状況が良く判ります。

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左右下額臼歯の舌側面観です。インプラントおよびクラウンとインレーの状況が良く判ります。 臼歯部の歯周病治療の常として重症であればあるほど,このように歯茎の位置を下げることが多くなります。

写真を見ても判るようにプラークの付着は肉眼では判らないレベルに保たれており,非常に良好な口腔衛生の状況を維持しています。 特に臼歯の舌側面は歯ブラシの困難な部位です。 このようなプラークコントロールを実現するために,2年の治療期間を通じて練習を繰り返しました。 けして難しいわけではありませんが,40年間の習慣をあらためるのはそれなりには大変であったでしょう。 しかし,その結果としてかけがえのない環境を手に入れることができました。

■ 治療例をご覧になるにあたって

 このセクションに記載されている症例は,あくまで提示されている個々のケースにおいてのみ妥当性があると診断され,それを希望した方(患者さん)が個人のご希望とご責任により治療されたものの一部です。 患者さんたちはすべての説明を受け,その長所短所を十分にご理解いただいた上で処方され,治療後のフォローアップを受けておられます。 これらの例はあくまで,過去の治療例であり,新たに治療をご希望の方にはそれぞれに適した治療計画を診査診断の上で探る必要があります。

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